福岡高等裁判所 昭和26年(う)2952号 判決
検察官の陳述した控訴の趣意の要領は第三住吉丸は、被告人日出谷輝一において所有者九州運送株式会社から適法に賃借し被告人等は右正当権限に基きこれを占有していたものであるから元来沒収し得べき性質のものであるがその後右占有を喪失し原判決当時においては該船舶自体を沒収できない状態にあつたのであるから原裁判所はよろしく関税法第八十三条第三項によりその価格を追徴すべきであつたのに事茲に出なかつた原判決はこの点において違法があるので破棄の上相当の裁判を乞うと云うにある。
(中略)
よつて先ず検察官の控訴に付按ずるに原判決記録によれば被告人日出谷は第三住吉丸の所有者との間に賃貸期間昭和二十五年八月十日から向一ケ月の定めで該船舶を賃借し被告人高牟礼、同平賀と共謀の上該船舶による密輸出入を企て孰れも右船舶に乗船し右賃貸期間中である原判決記載の日時に同記載の如き密輸出入を遂げ、被告人猪野は右の情を熟知しながらその間機関士として同船に乗組み之を運航し右密輸出入を幇助したものであつて、被告人等は孰れも正当権原に基き該船舶を占有していたものであるが判示最後の密輸入を遂げると同時に(本件検挙前)該船舶を所有者に返還し原判決当時被告人等において右船舶を占有していなかつたことを明認できる。従つて原裁判所としては関税法第八十三条第一項により該般舶の沒収をすることが出来なかつたことは当然であるがかかる場合においてこそ同条第三項により右密輸出入の犯人である被告人四名から判決当時における該船舶の価額を追徴すべきであつたのに事茲に出なかつた原判決には判決に影響を及ぼすこと明らかな法令の適用の誤あるものと云うべく検察官の本件控訴は理由があり原判決は、この点において破棄を免れない。